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燃焼のための習作
堀江 敏幸
講談社 2012-05-24
評価

by G-Tools , 2012/07/10



ほう。
思わず吐息がでるような、時間が流れておりました。

港に近い倉庫街。
閑散とした街中の雑居ビルにある探偵事務所。
そこには、事件をパキパキと解決するような
ハードボイルドな探偵はいない。
禿げた頭、お腹の出た中年男がいる。
彼は、話を聞く探偵だ。
依頼人は何を求めてここへ訪れるのか。
ただ話をすることで、自分の本心を見つけていくようだ。

嵐に囲まれた事務所で流れていく時間。
ほんの数時間の描写が秀逸。


強くなる雨足、近づく雷鳴。
だんだんと濃くなっていく嵐の気配。
無機質なコンクリートに囲まれた部屋の中で
ことさら敏感に聴覚が外の気配を感じ取る。
人気がない街を風が吹き抜けていく。
コーヒーの空き缶が転がっていく。
外は不安な気配に満ちていく。

その一方、部屋の中では
聞き上手の探偵と話し上手の助手が
依頼人と話しているだけなのに
暖かい暖炉のような空間を作っている。

まるで関係のないような話が続くなかで
開いていく各々の記憶の扉。
引き出される些細な記憶。

何も解決されていないのに、なぜか満足してしまう。
そういう時間がここには流れていた。


堀江さんの描く本は雰囲気がありますね。
ほぅっと吐息が出てしまいます。

枕木さんと郷子さんの関係性とか
姿は出てきてない枝盛さんや伊丹さんのことが
気になって、気になって。
また素敵な本でした。

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こいしり (文春文庫)
畠中 恵
文藝春秋 2011-11-10
評価

by G-Tools , 2012/06/05



『まんまこと』の続編です。

町名主の跡取り、麻之助がついに結婚!
前作が全編切なさに満ちていたのに対して、
流れに身を任せ、運命をゆっくりと受け入れていく麻之助の
いい具合が描かれています。

人生はままならない。
けれど、生きている今もまたそれなりに幸せがある。

そんな雰囲気の本でした。

町で起きるささやかだったり、穏やかじゃなかったりする
いくつかの出来事を麻之助と悪友二人が気持ちよく解決していきます。
中には、ちょっと不思議な出来事があったり、
しゃばけ作者らしいお話も。

獣好きな方にも、今回はかわいい3匹の子猫が出てきておススメ。
猫のふにがいいですよ~

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ころころろ (新潮文庫)
畠中 恵
新潮社 2011-11-28
評価

by G-Tools , 2011/12/19


お馴染み、しゃばけシリーズ。
定期的に刊行されることの幸せさ。
いつシリーズが尽きてしまうかとドキドキしながら
新しい話が読めるのをいつも待っています。

今回は、なんと!
若旦那が目の光を失ってしまいます!
そして、光を取り戻すまでの兄やたちの奮闘が
いくつかのお話に分かれ、1冊を構成してます。

今までで一番、よくできているというか、
小説として、構成がすばらしいと思う。
物語の面白さとか登場人物のキャラクターで
ある程度以上、満足して読めるこのシリーズ。
今回は、一つ一つの話のクオリティと
縦軸にある若旦那の目の話との組み立てが天晴れ!

さらに、若旦那が視力を失っていることで、
これまでと違った感じで周囲が描写される。
それがそれぞれの物語をより謎めいて見させているという、
あらゆる点で、巧さを感じました。
偉そうに聞こえちゃうけど、
確実に畠中さんの技量があがっているのだと思う。


ファンとしては、二人の兄やが活躍すると嬉しくなるのだけど、
今回は特に佐助のおもわぬ話があったりと、
二人の頼もしさが存分に楽しめて幸せでした~
あ~鳴家が欲しい。。。

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馬たちよ、それでも光は無垢で
古川 日出男
新潮社 2011-07
評価

by G-Tools , 2011/10/18



福島出身の著者が、3月の地震を見て、感じて、想ったこと。
あんな光景を見た後で、本なんて書けるわけがないと著者は言う。
あの悲劇を目の当たりにして同じことを感じた表現者たちが何人いたことだろう。
それほど、感覚に鋭く突き刺さった出来事。
しかし、福島に生まれ作家として生きる著者はやはり何かをしないわけにはいかなかった。自分の目で見にいった。
数年前に描いた東北の小説、『聖家族』の登場人物たちと会話しながら、東北の地を回る。

普段、心地よい疾走感をもって描かれる古川さんの文章が、
喪失感と痛みを孕んで、綴られる。
だから、読んでいるこっちも心が痛くて痛くて仕方がない。

鳥、犬、馬への視線。
今まで小説の中で古川さんが描いてきたものたちが、リアルな視線で捉えられる。
そこに生きるものたちの姿。
どんなに空が青く澄んでいようと、風がさわやかに吹きぬけようと、
その空気には見えない恐怖が交じっている。
そのことを知らずに、人がいなくなった地に放たれた家畜たちはどう生きるのだろう。
知らないから不幸ではないのか?哀しくはないのか?

青い空の下で、やせ衰えていく家畜たちを想うと、これが現実世界かと思う。
でも、事実あるのだ。今もなお○○km圏内というくくられ方をして。
そういう地があることを日に日に忘れて日常に戻っていく自分の後ろめたさ。
何もできないという無力感はもういいとして、せめて忘れてはいけないと思う。あの時の感覚を。それがまだ続いているという事実を。

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船に乗れ!〈1〉合奏と協奏船に乗れ!〈1〉合奏と協奏
藤谷 治

船に乗れ!(2) 独奏 船に乗れ! (3)

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数年前に、すごく話題になった本。
文庫化を待ち望んでおりました。

音楽一家に生まれ、音楽科の高校に入ったサトルの青春小説。

全くクラシック音楽に疎いので、
出てくる曲をYoutubeで調べて流しながら読みました。
音楽を全然理解できなくても、誰しもが通ってきた思春期の
様々な想いが伝わってくる本。

思春期って、自分が特別であるかのような優越感を持っている一方で
世界の広さを目の当たりにして、不安で押しつぶされそうになったり、
と複雑な時期だ。
初めての恋やら、挫折やら、進路決定という初めて自分で選ぶ人生の岐路があったりと
本当に濃い時期なんだよね。

このサトルは、音楽学校の理事長の孫という特別な環境で、
あたりまえに音楽に触れ、同じように音楽を語れる仲間に出会い、
そうして、初めての挫折を味わう。
それは、技術的な挫折であり、失恋という挫折であり、
彼の人生を大きく変えてしまう出来事であった。

痛みを持って描かれるサトルの高校生活は、
生き生きとした喜びと哀しみに満ちていて
自分たちの過ぎ去った大切な日々を思い出させてくれる。

本当に思春期って、二度と戻りたくはないけど、
いとしい日々だったなぁと思う。
誰しも、自分が選んだきた道が正しかったかなんてわからない。
進み続ける人生に、どれほどの痛みを抱え、向き合って生きていくかなんだ。
だから、「もしあの時・・・」という瞬間があったとしても、
自分が選ばなかった方の結果にすがってはいけないんだと。
そんなことを感じた本でした。






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