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尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)
多和田 葉子
講談社 2010-07-24
評価

by G-Tools , 2011/12/12




多和田さんの本は2冊目。

ドイツの田舎にある修道院を訪ねる一人の女性。
彼女の一人称で始まる物語はちょっと唐突な感じで、少し戸惑う。
多分それは、ドイツの修道院と日本人という馴染みのない組み合わせが
説明無しに展開されるからだろうな。
こういうのを読むと、普段いかに親切な(余分とも言う)文章に慣れてしまっているかが分かるな。

読んでいくうちに、彼女のお気楽なというか、ちょっとふざけた感じの
思考や描写が面白くなっていく。
尼僧たちに変なあだ名をつけ、彼女たちを観察するその視点がユニーク。
このあだ名は結局私を混乱させることにしかならなかったけど・・・
もしかしたら、ドイツ語の音感を日本語に当てはめてるのかな?とも思うが
分からずじまい。
修道院というなにやら敬虔でお固そうな場所と
気楽で勝手な彼女の思考のバランスが面白い。

そして、この日本人は修道院を取材するために体験滞在をしているようで、
そのコンタクトをとっていた尼僧院長はもういなく、
この元尼僧院長は男と駆け落ちしたらしいと分かる。

そんな日本から来た”私”が観察する修道院の様子を描いた一部と
その本をアメリカで発見した元尼僧院長の独白が二部。

私はこの二部、好きだなぁ。

修道院に残っている尼僧も、修道院を出た元尼僧院長も
平穏を求めていながらも、情熱への憧れを捨てきれない、
女とはそういうものなんだろうと、教えてくれる。
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ポトスライムの舟 (講談社文庫)
津村 記久子
講談社 2011-04-15
評価

by G-Tools , 2011/05/02




パワハラ、鬱、派遣社員、ワーキングプア・・・
なんともこの時代ならではの話です。
時代のリアルを描く小説って、好き嫌いが出ますよね。
小説は、違う世界を体験できるからいいのに・・・みたいなことで。
私も普段どちらかといえば、そうなんだけど、
この本は、なんかちょっとクールな視点が読みやすかったな。
感傷的じゃなくて。

小説で描かれるナガセやツガワのように
女一人、社会を生きている身にとって、
痛々しさや苦々しさはとてもリアルで、
身につまされるけど、生きるって大変だよね、って
素直に共感できた。

多少、物語中の上司のように
「コイツ、仕事できなそう」なんて思ったりもしたけど、
自分ができたからといって、みんな同じことが出来るわけではないんだ、
という、他者への理解を戒められた感じ(笑)。

面白いのは、「生きていてすみません」みたいな
低姿勢にもかかわらず、頭の中は結構のんきだったり、
無責任な思考が飛び交っていたりという、
やっぱダメな奴っぽい描写が息が抜けていいな。


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雪の練習生
多和田 葉子
新潮社 2011-01
評価

by G-Tools , 2011/04/24



不思議なシロクマのお話。
3世代に渡るシロクマの物語。

「祖母の退化論」
「死の接吻」
「北極を想う日」

と、世代別にシロクマから世界が描かれる。
生まれ故郷であるはずの北極から離れ、
人間の社会を生きるシロクマ。
動物からみた社会の変遷、見られる動物からの視線、北極へのささやかな想い。

はじめは、美しいシロクマが自伝を描くという、
巨大なシロクマが小さなスカートをはいている絵が
なんとなく浮かぶちょっと滑稽でポップな印象だったのが、
そこから時代を経るにつれ、どんどん切なくなっていく。
何だろう、哀しい出来事が描かれているわけでないのに
じわじわと胸がしめつけられていく。

サーカスでの経験を書いたことで、亡命にまでいたった
シロクマから始まり、
伝説の曲芸を披露して人気だった娘シロクマのトスカ、
この時代でシロクマと曲芸師である人間との魂の交流が描かれ、
最後はなんと、ベルリン動物園のクヌート!!からの視点で
世界が描かれます。

人間との意思疎通ができたり、識字力のあるシロクマだが
食欲をセーブできなかったり、常に暑くてたまらなかったりと
らしさとらしからぬ性質が混在しているのがとても魅力的だし、
あの真っ白でフワフワした外見が要所要所で想像させられるのも
動物好きにはたまらない。

それに対してシロクマが指摘する人間の性質は鋭くてハッとする。
シロクマから見る人間は退化した動物なのだ。
食べるものに困っているわけでもないのに、狩りをする。
理由のない衝動は意味のない行動だ。
そう考えたとき、果たして人間の行動に意味のあるものは
どれほどあるだろう。

シロクマは決して人間を愚かだとは描いていない。
むしろ愛情を持って描いている。
それがよりいっそう、人間の愚かさを感じさせる。


元々シロクマに対して人一倍想いのある方なので、
なんだかとても哀しくなってしまった。
地球上で最も孤独な生き物だと勝手に思っているホッキョクグマ。
ただでさえ、厳しい世界で生きているのに、
温暖化がすすむことで彼らはどんどん追い詰められている。
申し訳ない気持ちでいたたまれなくなっちゃう・・・

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電気馬
新潮社 2009-03
評価

by G-Tools , 2009/09/11





初めて読む作家さんです。
おはずかしながら、今調べていて、太宰治の娘であることを知りました。
ほぇ?そうなんですか。
つくづく、まだまだ知らない作家さんがいるなぁと、自分の無知を恥じる思いです。

で、作品は、というと10年ぶりの短編集らしいですが、いやぁ、暗いですよ。
帯には”人身売買、継子いじめ、人身御供など、伝承をモチーフに原初の親と子、男と女を描く”といったようなことが書かれています。

誰かの犠牲になる人生や、自分の”生”の意味を考えずにはいられないような話がほとんどです。親が子を捨てる、子が親を捨てる、そんな昔から、色々な地域で起きている関係性を切り取って、内面にぐりぐりと入り込んで、そしてポンと世界に放置される。そんな感じがしました。
伝承をモチーフに・・・というだけあって、言い伝えと今そこにいる人の人生とが入り乱れて、混沌としてました。なんか飛ぶんですね、世界が。
突き放されてるわけではないんだけど、連綿と続く人間の暗い歴史の中に、ズルっと引きずり込まれて、出口が見つからなくて、途方に暮れる感じ。

表題の「電気馬」は良かった。自分の解釈が正しいのかわからないけど、人から放たれる殺意。電気のように走る衝動。そんなものに意識があったのなら、こういうことではないんだろうかと思った。電気馬は常に人と人の間を走りぬけ、誰かを傷つけ放たれている。そんな様が目に浮かんだ。

ちょっと滅入るかもしれないけど、言うほど暗くもない、不思議な読後感の本でした。

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