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バルタザールの遍歴 (文春文庫)
佐藤 亜紀
文藝春秋 2001-06
評価

by G-Tools , 2010/08/30





また素敵な作家さんを知ってしまった。
佐藤亜紀さんは初めて読みました。
しかも存在すらしらなかった。
ご存知の方には、何を今更・・・なことでしょうが、
知らなかったもんは知らなかったんだからしょうがない。
いや?本当にいろんな作家さんがいて、
読みたい本が尽きないって幸せ。
未読の本が本棚に並んでいると、まだ死ねないなぁって思うわ(笑)。

なんて奇想天外な本。
ハプスブルグ王朝の終焉により、没落する貴族。
そんな題材をまるで外国文学のように綴っている。
が、だまされてはいけない。
この本は、堅苦しい貴族の悲哀だとか、
時代の終焉を憂うものでは決してない。

没落貴族カスパール・フォン・ヴィスコフスキー・エネスコ公は
一人の体に二人の意思が存在している。
もうひとりがバルタザールである。ようするに脳は双子。
よって、一人称で語られる文章は、カスパールとバルタザールが
入れ替わったり、会話したりしてつづられる。
読んでいるうちに”私たち”という呼称がなんの違和感もなくなってしまうが、
そこで描かれている世界には彼は一人で存在しているから、
おかしな人と思われるのは当然だ。
しかし、彼らはそんなことを隠そうとも気にしようともせず
堂々と生きている。それがこの本の魅力でもある。
カスパールとバルタザールと周りの世界。

家の没落による、その転落人生。
酒におぼれ、女におぼれ、貴族らしく
難しいことを考えず、労働もせず、
日々自堕落に生きる彼ら。
ウィーン、パリ、そして逃げてきたアフリカの地。
それぞれの地で彼らは彼ららしく生きていた。
そして彼らが二人の人間であったこと以外に
もうひとつ特殊な能力が物語の後半を彩る。

”壁抜け”というあだ名を持っていた父親の血を
受け継いでいたふたり。
どういうことかというと、体を抜け出せるのだ。
抜け出した体は鏡に映らない、影がないこと以外
普通の肉体と変わらない。
その能力によって、ガスパールとバルタザールは
実質的にも二人となりえることになる。

何でしょう、この奇想天外な物語。
めちゃ面白いです。
バンパイア伝説があったように東欧の貴族には
こんなオカルト傾向があっても違和感ないってこと?
いや実際違和感なく読んだんだけどね。
時代背景、舞台、人物像、すべてが物語としていい!
本当に日本の作家さんが書いたのが不思議な本でした。
これがデビュー作って恐ろしい人ですね。

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かたみ歌 (新潮文庫)
朱川 湊人
新潮社 2008-01-29
評価

by G-Tools , 2010/08/24




久しぶりに朱川さんの本。

東京のとある下町。
アカシア商店街のあるこの町は、不思議な現象が起きる町。
どうやら覚智寺という小さな寺が、この世とあの世をつないでいるらしい。
そのせいか、この町では、死者がよく現われる。

防げなかった死、伝えられなかった想い、ただ会いたいという焦がれ・・・
生きるものの想いと死んでしまったものの想いが行き交う町。
死にまつわる様々な想いが色々な方法で伝えられる。
そこに恐怖や畏怖はなく、ただただ切ない気持ちがある。

朱川さんの得意分野ですね。
朱川さんという作家さんは、不器用な語り口で書き進めることがよくある。
読まれることを意識しない、文章を生業としない、普通の人の想いを素朴に記すためだろうか。
これは、書き手としては結構難しい作業なんじゃないかと思う。
書ける人が、文章を下手に書くって難しいよな?
この本は、この町に暮らす人々の不思議なお話がオムニバスのように入っているので、
その数だけ、文体が変えてある。
さらりと読める本だけど、書くのはそうであるまいと勝手に感心してしまう。

話によっては、泣いてしまうので、電車で読むのは要注意。

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エロマンガ島の三人 (文春文庫)
長嶋 有
文藝春秋 2010-07-09
評価

by G-Tools , 2010/08/23




長嶋有さんの作品は初めて読みます。
なるほど、なるほど、こういう作風でしたか。
ジャンルとしては、おっさん(笑)なのですね。

表題の短編は、「エロマンガ島へ行ってエロマンガを読もう」という
しょうもない企画で島に行った三人の男の物語。
扉も窓もない、高床式の家に泊まった学生時代の旅行を思い出した。
太陽を近くに感じる暑さ、土のにおい、真っ暗な夜、
どんだけ?な星、何キロ先の物音!?っていう静けさ、
住人たちのあまりに純粋な好奇心・・・
こういうところ、まだ世界のどこかにはあるのかな?
あるといいな。狭い街中で暮らす私たちのちっぽけな生活が
どうでもよくなるような場所。
猛烈に旅したくなる本でした。


物語としては、ほかの短編のほうが面白かったです。
ただ、全体を通してゲームに疎い私には分からない冗談や描写が多くて
仲間になれない残念な気持ちになりました。
作家さんとのバッググラウンドの共有って大切だよな?と
強く思わせられる作品でした。



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つくもがみ貸します (角川文庫)
畠中 恵
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-23
評価

by G-Tools , 2010/08/16




しゃばけシリーズかと思ったら、また別のお話でした。
最近、若だんな不足でさみしいな。鳴家(やなり)たちに会いたい。

とはいえ、こちらもつくもがみ達が活躍する妖怪ものなので、
似たような雰囲気ではあります。
こちらは、古道具屋兼損料屋、出雲屋を営むお紅と清次のお話。
損料屋とは、家具やら衣類やらを貸し出すお店。
自然、古い道具が集まる商売。出雲屋の中には、100年以上経って
つくも神となった古道具たちがいっぱい。
彼らは決して人間と会話はしないけれど、店の中でわいわい話をするので
お紅と清次はそれを聞いている。
つくも神たちの噂話を聞いて、清次たちが町の不可思議を解決していく。
そしてまた、お紅と清次の間の問題にもつくも神たちは興味津々で・・・


根付や屏風、水彩画に香炉・・・
良い物だから大事にされ、何年もの時を経てなお、壊れずにあることができる。
人に大切にされてきたからこそ魂を持つことができた付喪神ゆえに性根がいい。
噂話も好きだし、おせっかいだし、となんとも人好きのする妖怪たちだ。
妖怪の血もながれる若だんなが妖怪たちと仲良くしているのもほほえましいけど、
付かず離れず、適度な距離感で人と関係を持つこちらの付喪神たちも
なかなかに魅力的。
この作品はまた、清次のキャラクターもいい。
こちらもシリーズ化したら、読みたい物語でした。

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私たちがやったこと
レベッカ ブラウン Rebecca Brown
マガジンハウス 2002-09
評価

by G-Tools , 2010/08/09




愛の短篇集。
この本で初めて知ったんですが、この作家さんは同性愛ものが多いみたいですね。まぁ、同性愛の恋愛小説だから、どうという本ではないのがいい。
同性、異性関係なく、二人の間で起きること、二人の愛が壊れる時、そういう移り変わりが描かれている作品集。

表題作は、結構衝撃。

「安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した」

という文言から始まる物語。
とても静かに語られるこの愛の物語は、なんだかとても悲しい。
強く結びつくために、二人だけの世界を確立するために行ったこの愚かな秘密が、二人を身動きの取れない関係にしてしまう。
依存しあわなければ生きていけない関係は、愛の形として間違っていると思う。
彼らのようにどっちかがいなければ生きられない状況では、なにを共感すればいいのか。
”あなた”が聞いている音を聞くことができない”私”。
”私”が観ている景色を見ることができない”あなた”。
自分たちを傷つけ、絆を失う二人の哀しい愛。
それほどまでに愛することができた人とめぐり合ったことを幸せと思えばいいのか・・・

この短編以外にも、いつか二人の愛がひずみ、損なわれることを描いている作品ばかり。
同性愛を描く作家だから、結末にハッピーがないのかな?
愛なんて、絶対に永久じゃないという考えなのかな?
ま、賛成だけど(笑)。
でも、せめて小説の中だけは、幸せを見せて欲しいとも思ったりする。


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ともしびマーケット (100周年書き下ろし)
朝倉 かすみ
講談社 2009-07-22
評価

by G-Tools , 2010/08/03




スーパーって雑多で楽しい。
置いてある物も、利用する人も、働く人も、雑多。
個人の生活への関わり方は様々で、
そんな個々の生活がちょっとだけ交錯する場所。
その交錯した瞬間の見えない花火を書いたものだと思う。
その花火は、決して華やかなものではなくて、
まさに”ともしび”ぐらいなものなんじゃないかな。
それでも、その”ともしび”に心が動いてしまう。
そういうささやかな物語集なのだ。


これまで読んできた朝倉さんの本とは少々趣きの異なる本。
趣きが異なる?訳でもない気がするけど、
なにがどう違うのかは、説明しづらい。
うーん、引き込まれない?

これまでは、刺さるような現実的な痛みがどこかしらにあって
知らんぷりができないような内容が多かった。
でも、これはとても客観的に物語として読める感じ。
ある北の町に一軒のスーパーマーケットがありました。
そこに通う一人の主婦がいました。
と、とても俯瞰な視点でこの物語を見る感じかな。


これは、朝倉さんが書いても書いても作品が採用されない時期に
編集の方から提案されて始めた短編オムニバスらしい。
売れることとか、そういうことを気にせずに書けた物語だそう。
そのせいか、いまいち評判はよくない。
書きたい物語が、読みたい物語になるわけじゃないものね。
でも、そういう作品があってもいいと思う。
作り出すことに意味があるときだってある。


そういえば、花屋のヤンさん(だっけ?)は、
『好かれようとしない』にも登場してたかしら?
私の中で、この二つの町はまったく交錯しないので、
なんだか違和感。
それともヤンさんは、花屋を移ろっているのかな?




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ぼくの名はチェット (名犬チェットと探偵バーニー1) (名犬チェットと探偵バーニー 1)
スペンサー・クイン 古草 秀子
東京創元社 2010-05-28
評価

by G-Tools , 2010/08/03




これは、面白い!!
私立探偵と名犬チェットが活躍するミステリーと聞いて、
古典的なミステリー小説を想像していると、ぐんと期待値を上回ります!

この本は、チェットの視点で書かれているので、犬的思考(があるかは知らないけど)で
物事が進み、天才犬ではないチェットのゆるさがいいスパイスになって、
ニヤニヤしながら読めます。
犬にはわかっていても、それを人に伝えられないもどかしさとか、
その緊迫した状況で、なぜ拾い食いを!(笑)とか、
飼い主の探偵バーニーに対する”好き”が散りばめられている感じとか、
なんとも犬らしくて、しょうがないかっと納得してしまう。

落ちている物を食べてしまう、思わず飛びついてしまう、
プールに飛び込んでしまう、などなど、欲求を抑えられないチェットの
かわいさが爆発!
名犬なのか、ダメ犬なのか、判断がつかないまま事件は進み、
クライマックスにはその名犬っぷりを存分に発揮して大団円。
とてもハッピーになれるミステリーでした。

続編が早く読みたい!!

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