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居心地の悪い部屋
岸本 佐知子
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-03-27
評価

by G-Tools , 2012/07/26



岸本さんが好きな風変わりなお話を編んだ海外文学アンソロジー。
タイトル通り、ちょっとザワッとする読後感の短編がもりっと。
短編ならではの、全様が見えないからこその怖さがあります。
行間というか、例えば電話の向こうの静けさみたいな、
見えない空間の怖さがどの短編にもある感じです。
ホラーよりのものだけでなく、それこそ苦笑してしまうようなお話も。

ただ読み終わる頃には、読み始めた時と違ってしまった世界が
広がっていて、物語の中の人物の孤独や恐怖、焦燥感がひしひしと伝わってきます。
居心地が悪いけれども、もっと読みたくなる、そういう物語の魅力が詰まった本でした。
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毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記
北原 みのり
朝日新聞出版 2012-04-27
評価

by G-Tools , 2012/07/22



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別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判
佐野 眞一
講談社 2012-05-25
評価

by G-Tools , 2012/07/22



ノンフィクションものはあまり読まない。
木嶋佳苗にも興味はなかった。
なんだけども、”東京ポッド許可局”で語られていたこの2冊がとても気になったので、読んでみた。

想像以上に面白かった!
先に『別海から~』の方を読んでいたら、
ただの事件の一つとして興味ないままだったかもしれない。
けれど、『毒婦』の方は、作者の視点が面白かった。

このデブでブスな女が複数の男から金をだまし取っていた事件は、
やはり男と女によってとらえ方がかなり異なるのだろうなと。
さらに同じ女同士でも、美人とそうでない女でもかなり異なるはず。

彼女は淡々とお金を”援助”という形でもらい、
自分がセレブのような生き方をすることをまっとうした。
わかりやすいほどに。
それはもちろん、授業代だといってもらったお金をベンツ購入や
高級マンションの家賃にあてていたので、詐欺といえば詐欺だ。
でも、お金を渡した方の男たちは、その使い道なんて本当はどうでもよかったんじゃないだろうか?
要は、結婚したかった。見た目の判断で自分たちより”下”と思った女。
ブスだけど、やらせてくれるし、料理上手だし、まぁいいかと。
そういう心のどこかにあった蔑みを見事に突け込まれたんじゃないだろうか。

正直、木嶋は殺しさえしなければ、この後もずっと男たちからお金を取っていたはずだ。
詐欺だけだったら、むしろあっぱれな生き方だと思う。
自分が生まれもった運命とか性というものに、まったく左右されなかった女。
とりたてて秀でたわけでない容姿と家系。
そういうところに生まれた人間で、人より秀でたいと思ったら、
例えば勉強やスポーツや芸術などで人より優れているものを見つけるもの。
元々備わっている人には必要のない努力や時間を必要とする。
そこが、彼女は違う。
いや、違うというより人と違う方法を見つけたということ。
他人からの賞賛や認定など必要とせずに、自分が主役の生き方を見つけた。
それが彼女のすごいところだ。
実際、逮捕されるまで成功しているわけだし。

これは、男でも女でも学ぶところがあるんじゃないだろうか?
いや汗して生きていくことを尊いと思っている人には許せない生き方だけど、
どうにもならない人生をもがいている人たちは、ちょっと見過ごせないんじゃ・・・

なんて、危ない感化をされながらも気になること。
なぜ、彼女は殺したのか?

状況証拠だけで有罪となった彼女の、殺人にいたる心理はなんだったのか。
彼女は単に人を殺すことに何の罪の意識も感じない類の人間だったのか。
殺人と大金がはいってくる、自らが生み出したサイクルに自ら捕らわれてしまったんではないだろうか。
逮捕直前のあわてたように新たな被害者を取り組んでいく様はちょっと異様だ。
大金奪って、高飛びするつもりだったんだろうか?
それにしては、家まで引っ越してきて大がかりだ。

まったく本音を裁判で語らなかった木嶋佳苗。
裁判でもっと彼女の築き上げたプライドを崩せていたら、彼女は落ちていたんではないかとちょっと残念に思う。おそらく彼女は感情的な攻めや倫理観などではなく、”同情”というものに一番弱いのではないかと。そんなことをこの2冊を読んで感じました。


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燃焼のための習作
堀江 敏幸
講談社 2012-05-24
評価

by G-Tools , 2012/07/10



ほう。
思わず吐息がでるような、時間が流れておりました。

港に近い倉庫街。
閑散とした街中の雑居ビルにある探偵事務所。
そこには、事件をパキパキと解決するような
ハードボイルドな探偵はいない。
禿げた頭、お腹の出た中年男がいる。
彼は、話を聞く探偵だ。
依頼人は何を求めてここへ訪れるのか。
ただ話をすることで、自分の本心を見つけていくようだ。

嵐に囲まれた事務所で流れていく時間。
ほんの数時間の描写が秀逸。


強くなる雨足、近づく雷鳴。
だんだんと濃くなっていく嵐の気配。
無機質なコンクリートに囲まれた部屋の中で
ことさら敏感に聴覚が外の気配を感じ取る。
人気がない街を風が吹き抜けていく。
コーヒーの空き缶が転がっていく。
外は不安な気配に満ちていく。

その一方、部屋の中では
聞き上手の探偵と話し上手の助手が
依頼人と話しているだけなのに
暖かい暖炉のような空間を作っている。

まるで関係のないような話が続くなかで
開いていく各々の記憶の扉。
引き出される些細な記憶。

何も解決されていないのに、なぜか満足してしまう。
そういう時間がここには流れていた。


堀江さんの描く本は雰囲気がありますね。
ほぅっと吐息が出てしまいます。

枕木さんと郷子さんの関係性とか
姿は出てきてない枝盛さんや伊丹さんのことが
気になって、気になって。
また素敵な本でした。

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三匹のおっさん (文春文庫)
有川 浩
文藝春秋 2012-03-09
評価

by G-Tools , 2012/07/01


ひさびさに痛快小説に出会いました!
時代劇好きにはたまらない勧善懲悪、成敗ものです。

還暦を迎えた幼馴染のおっさん3人。
隠居するにはまだ元気すぎると、空いた時間で町内の見回りを計画。
勝手に自警団を結成することに。

剣道の先生でもあったキヨ、柔道の腕が立つ重雄、メカに強いノリ。
かくして「三匹の悪がき」が「三匹のおっさん」となって町内で大活躍!


まず、キヨさんが定年を迎えるところから始まるんだが、
今どきの60歳なんて、全然おじいさんじゃない。
そういう周囲からのジジイ扱いに対する反抗心や、
ジジイたちをかこむ家族たちの描写がま~うまい!
特に、キヨさんと孫の祐希とのやりとりは絶妙。
個人的にはキヨさんの奥さん、芳江のスパッとした性格が
好きだなぁ。気持ちがいい!
嫁をぴしゃりとやるところなんて、いっそ清々しい(笑)

小説だから、とことん気持ちよく書いてほしいけど、
うちらの町にもいたらいいね、三匹のおっさん、と
思わずにいられない、現実の哀しさよ。


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ほとんど記憶のない女 (白水Uブックス)
リディア デイヴィス 岸本 佐知子
白水社 2011-01-22
評価

by G-Tools , 2012/07/01



面白い本でした。
なんと51もの話が入っています。
それだけの数がありながら似ている話がない。
どれもこれも違うタイプの物語。
物語なのか?とさえ思う短いものもあり。

訳者の岸本さんによるあとがきがとてもわかりやすい!
私が特に惹かれた『グレン・グールド』という話についても
”彼女の息づまるような焦燥感”と表現してますが、
まさに!と思いました。

この短編は、子育てをしている専業主婦が
好きなテレビ番組について語っているものなんだけど、
夕方の忙しい時間帯にコメディ番組を楽しみにしていることを
うしろめたく思う主婦の孤独がそこにはある。

毎日、家事に育児にと真面目にこなしている彼女が
たかだか一つのテレビ番組を楽しみに見ているということを
なぜこんなにも言いにくそうにするのか。
家で一人子どもと向きあい、外から入ってくる情報はテレビだけ。
閉ざされた主婦の日常がそこには見える。
ただのテレビ番組でさえ、誰かに肯定されたい、そんな思い。

決して不幸ではない人たちの、心の中にくすぶっている感情や
一生懸命生きている毎日に見え隠れする孤独。
思わぬ鋭さで胸に迫ってきます。

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