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ますます好きです、梨木香歩さんの作品。
既に読んでいる『家守綺譚』と対の物語と聞いて、どれどれと読み始めた。あー、あの村田さんのことかぁと言うくらい、向こうの本ではさらっと出てきた人でした。

1899年当時。トルコ文化の研究のため、トルコに渡った学者・ムラタの見聞録。話の節々に色々な世界情勢が出てくるんだけど、世界史選択だったくせにピンと来ない私・・・。
でも歴史オンチでもしり込みすることはない。
穏やかだけど、熱い思いを秘めたムラタと古代に情熱をかける友人、政情を憂う女性たち、哲学的な鸚鵡(オウム)、魅力的な登場人物の話に引き込まれます。
正直、油断してた。
ニヤニヤしながら、読める物語だと思ってた。
もう壁をなめる牛とか、絶妙な合いの手を入れる鸚鵡とか
素敵な動物たちが出てくるし、喧嘩する神様とか、いじけてしまう神様とか出てくるし、のんきに読み進めてました。

突然、後半の2章くらいから、電車の中で涙をこらえなければならなくなった。ムラタが日本に帰国し、『家守綺譚』の舞台となっている家とか出てきて、ふんふんと読んでいたら、あっという間にトルコの情勢悪化。改革の波にのまれながらも、自分たちの大切なものを守るため、信念を貫くため、命を落としていく友人たち。
こらえていた涙も鸚鵡の一言によって、あふれ出そうになったけど寸止め。通勤電車で泣くわけにはいかんもんね。相当顔ゆがんでたと思うわ。
― ディスケ・ガウデーレ(楽しむことを学べ)
― 友よ!

思い出すと泣きそうだ。

そして忘れられない言葉。
― 私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない

誰に罪があるわけでもなく、思想が違う、宗教が違う、そんなことで争わなくてはならないなんて。みんなそれぞれの神を持っているのに。
神とは何か?このことは節々で語られていたけど、この問いほど日本人にとって難しいものはない。
神は色々なものに宿る。でもそれは人が作り上げた神像でしかない。
そこにある、いると思えば、そこに宿るものなんじゃないのかな。
神様同士も喧嘩してしまうくらいだったら、始めから人間だけを考えて生きればいいのに。
信じる神のことは理解しあえないかもしれない。
でも人間であるということだけでつながれるはず。
みんながそのことを理解できたら、誰も傷つかなくて済むのにね。

鸚鵡とのやり取り、ムラタの想い、友人たちの求めるもの、色々なことがトルコの情景描写とともに染みた。登場人物たちの”生”を感じた。
印象に残る描写も多くて、日本人・ドイツ人・ギリシャ人の雪合戦、戦場で鸚鵡を肩に乗せているムハンマド、そのムハンマドから離れないでいた鸚鵡・・・
なんて世界を描くのが上手い人なんだろう。
入り組んだ路地や港や遺跡が目に浮かぶようだった。

この本では鸚鵡が大切な役割をしてるけど、『家守綺譚』では犬のゴローがそれにあたるのかな。ゴローも愛すべきキャラだったけど、この名前のない鸚鵡も愛おしい。
どちらも人があるべき姿へ導いてくれる、単純な正解を教えてくれる、そんな存在だったような気がする。
2冊読んだところで、作者がこれらの本を対で書いた意図に思いをめぐらせてみようと思う。





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>つなさん
コメントありがとうございます。
本当に切なく、いい本ですよね。節々にしみる文章があって大切にしたい一冊となりました。
【2007/01/16 21:09】 URL | momo #-[ 編集]
momoさん、こんにちは。
私も油断して読んでいたので、最後の2章で、う、そう来るか!と思いました。
そして、ほんとに情景が浮かび、手触りまでもが伝わってくるような文章でしたねえ。壁とか、一緒に触っている気になりましたもの。
*トラバありがとうございました。こちらからもお返しいたしました。
【2007/01/16 20:32】 URL | つな #nfSBC3WQ[ 編集]
遅ればせながらTBさせてもらいました。
私もこの本油断してました・・・
最初7割くらいはユーモア溢れる本だったのにな。切なかったです。
「It's enough!」ですよねえ、戦争とか、争いとか。ほんまに。
【2005/12/07 00:50】 URL | ざれこ #79D/WHSg[ 編集]














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村田エフェンディ滞土録発売元 本を読む女。改訂版【2005/12/07 00:49】
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