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雪沼とその周辺
堀江 敏幸
新潮社 2003-11
評価

by G-Tools , 2007/06/08




あーなんだか心が落ち着く静かないい小説だった。堀江氏の本をよかったなぁと思えるように自分がなったことがちょっと嬉しい。少しは大人になったのかな。
堀江氏の作品を読むのは、2度目なはず。『一階でも二階でもない夜』を手に取った記憶があるけど、読みきらなかったような・・・面白くないというより、その静かなタッチとフランス文学風な描写がその時の自分には馴染まなかったんだよな、確か。

山あいの町、雪沼とその周辺に住まう人にまつわる短編集。最初の短編のタイトルにあるように、人生の半ばにおいて、自分の”スタンス・ドット(=立ち位置)”を見つめる人たち。ボウリング場、レコード店、製紙工場、中華屋・・・都会から離れた雪沼とその周辺で自分の来し方、行く末を思う主たち。「幸せだったのか?幸せなのか?」そんな直接的な想いはどこにも描かれてはいないけど、登場人物の誰もが今の自分の立ち位置を見つめ、結局は幸せなんだろうなという気配がある。
どこの町にもいるであろう人間たちの生活を秀逸な小説にしているのがすごい。ありがちな言葉で言うならば、登場人物たちの息遣いさえ聞こえてきそうな静けさと生々しさがある。雨の音、雪の音、古いアンプから出る音楽、そういった音の感覚を研ぎ澄まされる感じ。
堀江氏の小説は、まさに静謐で、どことなく異国っぽい風情がある。フランス文学の影響かな?この静けさ、密やかさ、異国っぽさ、小川洋子さんの描く世界と似てる気がする。
やっぱり堀江氏の小説は大人が読む本だと思う。

どの短編もよかったけど、「送り火」なんか好きだな。古い農家の田舎家の2階で書道教室を開く陽平さんと絹代さんの夫婦。灯油ランプを集めるのが趣味の絹代さんがまたランプを買ってきたところへ、飾るだけでは難だから、たまには灯を入れればいいのにという陽平さんとの会話から話は始まる。この冒頭から陽平さんの話し方、息遣いが伝わってきて、陽平さんという人がキリリと鮮明に輪郭を表す。上手いなぁと思う。大きな梁にかけられた様々なランプ。これに灯りが灯ったら、さぞかし幻想的だろうなと想像できちゃう雰囲気。
親子ほどの年の差がある二人が一緒に過ごしてきた時間が優しく語られて、とても大きな不幸もあったけど、またこれから二人で仲良く生きていくんだろうなという予感。
とても優しい時間が流れてる。いやいや、素敵な本でした。
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学



















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