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水辺にて―on the water/off the water
梨木 香歩
筑摩書房 2006-11
評価

by G-Tools , 2007/06/08




梨木さんの新刊だと思って、ろくろく見もせず買ってきたらエッセイだった。私はあまりエッセイを読まない。読みたい本がいっぱいあるのに、本当の話で時間を埋めるのがもったいない気がするからかもしれない。
でも、この本はよかったな。梨木さんのカヤック生活を綴っている本なんだけど、梨木さんという人がストンと理解できる本。これまで読んできた梨木さんの小説を想い、「ああ、そうか。そういうことか。」と納得しながら、彼女とともにあちらこちらの川や湖をたゆたう感じになれた。
『裏庭』など、どこか異国の地を思わせるようなファンタジーが、やはりイギリスのそういった文化を強く影響受けている人なのだなと分かったり、沼地などの水辺が異境の地とつながっているような感覚。よく小説に出てくるあの感覚が、ご本人自身に常々あるものなんだなとか、梨木さんという方を理解するのにとても役立つ本だ。
イギリスでの思い出を語っている章では、個人的にある本を思い出した。コニー・ウィリスの『犬は勘定に入れません』とジェローム.K.ジェロームの『ボートの3人男』。どちらもテムズ川を下る話。前者は後者にオマージュを捧げつつ描かれたSFなんだけど、これまで読んだ海外SF小説の中で一番面白かったと思う(といってもこの手の本にはかなり疎いんだけど)。その本を読んでいたときの情景を思い出すような記述がいっぱいあって、懐かしくなった。

“自然を愉しむ”という行為から遠ざかって数年。知らないことがいっぱい書かれていて、素直に驚き、梨木さんと同じように感傷に浸ってしまったりと、ちょっとしたネイチャー気分を味わえた。特にクジラの声の話。クジラが種別に声を放っていること自体、初耳だったけど、誰も答えることのない周波数でただ一頭だけ声をあげているクジラがいるという。
ああ、なんて海の中は神秘的なんだろう。海の中にはクジラの発する声まで飛び交っているのか。

でも、梨木さんが、水辺に惹かれる理由と同じような理由で私は水辺が苦手だ。特に海。泳ぎを得意としているのに。広すぎるからかな。どこまでもつながっている怖さと、何がいるかわからない怖さ。子どもの頃は大好きだった海水浴も10代後半から意識的に避けている。まさに“底知れない”怖さがあるんだな。スキューバに凝っている友人がいるけど、彼女らもまた梨木さんと同じような理由で潜るのが好きみたい。「連れて行かれるような感じ」だとか「このまま海と混じりあってしまいたい」とか、そういう感覚。それが怖いっつうの!
ああ、でもイルカやクジラは何故、海に戻ってしまったのだろう。アザラシの女は何故、陸でも生きていけるのに、海へ戻ってしまったのだろう。それが本性というものか。
じゃあ、人の本性はどこにあるのか?どこへ戻っていけばいいのだろう?
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学



















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