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わたしを離さないで
カズオ イシグロ
早川書房 2006-04-22
評価

by G-Tools , 2007/06/08




カズオ・イシグロ氏の作品を読むのは、『日の名残り』に続いて2作目。淡々としている感じは相変わらずです。あとがきに柴田氏が”抑制された””静謐な”文章と描かれていましたが、まさに”抑制された”小説です。決して感情的にならず、衝撃的な世界を描いております。
あちらこちらでネタバレしないような配慮がされた感想を見かけていたので、前情報を入れずに読んでみたんだけど、すぐに何のことか分かってしまった・・・なので敢えて詳細を書きはしないけど、分かる可能性は十分にある。
そう思って、この先は読んで下さい。

介護人をしているキャシーは、ある特殊な学校ヘールシャムで育った。ルースやトミーといった仲間たちと過ごした学校生活はありふれているようでいて、そうじゃなかった。「今思えば・・・」というキャシーの振り返りで語られる学校生活から徐々に彼女や他の生徒たちが置かれている状況が見えてくる。

ある目的のためだけに、生を受けた子どもたち。その目的を知っていようといまいと、彼らにはちゃんと幼少期があり、学校があり、仲間がいた。学校に守られていた時期、他の子どもたちと変わらない日々を過ごしながら、自分たちの違和感を知らずにはいられない。
成長とともに、目的に近づいていく彼ら。ただただそれを待つ日々。彼らなりの青春。抗うことのできない運命。

普段、意識せずに過ごしていた私達の生活、人生。それが彼らの生活を知ることによって、どんなに大切なものかを痛感させられる。
夢を持つこと。恋愛をすること。仕事をすること。人が生きるうえで必要か、必要ないか、そんなこと考えもしない無意識での通過儀礼が彼らにとってはどれほど、意味があって、そして無意味なことか。
彼らが”愛”を証明することに意味を持たせた皮肉。人は”愛”を感じる生き物に感情を持たずにはいられない。

キャシーが「Never let me go(わたしを離さないで)」という表題の曲にのせて、まるで子どもを抱いているかのように踊っている場面はあまりにも哀しくて、やりきれない。そんなところを見てしまったら、マダムじゃなくても号泣だよ。
読んでいるときよりも読み終わって今のように思い起こして、彼らの人生に思いを馳せると哀しみが増すなぁ・・・

これはイシグロ氏からの警告なのだ。この分野では先進国であるイギリスにいて、少なからずこの小説世界に行き着くような意見を耳にしているのではないだろうか。医学の名の下に、この技術を突き詰めていけば結局はこういう子どもたちが生まれるてくるのだと言うことを。
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学





はじめまして。
つなさん記事へのトラバからこちらにやってきました。

私も本書を読み終えて、未だに後を引くものを噛み締めている状況です。
このお話は架空の世界だけれど、今現実にどこかで起こっていても不思議ではないことなのかもしれません。
もしそうだとしたら、自分だったらどのように彼らの存在を受け止め、どのようにしたいと思うのだろうな。
とても哀しい話です。
【2007/08/29 12:48】 URL | 有閑マダム #.UUnsg0g[ 編集]
つなさん、こんにちは。
TB貼れないですか?何でだろう。
静かだけど感情を揺さぶられる文章ですよね。
カズオ・イシグロ氏の本は大人な本が多いです。
【2007/02/26 13:58】 URL | momo #-[ 編集]
momoさん、こんばんは。
これ、2006年の私のベストワンです。
私も極力前情報を入れないように、と思ってはいたのですが、読み進める内に、何の事か分かってしまっても、それで魅力が損なわれるような本ではなかったですね。勿論、なるべく前情報を入れない状態で読んだほうがいいとは思うのですが・・・・。
読んでいる間中、愛や哀しみ、彼らの色々な感情に圧倒されて、自分の心のなかにも色々な感情が渦巻いたように思います。
(トラバしたつもりなのですが、反映がされないようなので、URL欄に記事アドレスを入れました)
【2007/02/25 21:55】 URL | つな #nfSBC3WQ[ 編集]














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こんなものもありますよ。ぜひお越しください! cacchao.net【2007/06/18 06:36】
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