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むかしのはなし
三浦 しをん著

初めてこの作者の本を読みました。
何の前情報もなしに読んだから、構成や展開が意外でとても新鮮でした。上手い。面白い。好き。

各章に日本の昔話が前付けされているんだけど、その昔話を作者曰く”語りかえた”物語が7話。どの章も誰かが誰かに話しかける形で書かれている。
途中から隕石の衝突により地球がなくなるという出来事を軸に各章のつながりが出てきたりする。
よく読めば気づいていないつながりがまだありそう。
んー、この本一度読んだだけじゃ足りない気がする。

昔話と作者が書く物語。
この組み合わせが巧妙。さらに物語のタイトルも上手い。よく読まないと何をどう語り変えたのか、分からない話もあったりして、読み返してその意味にニヤリとしてしまったりする。
組み合わせを書いちゃうので、一部ネタバレしちゃいます。

「かぐや姫」とヤクザに命を狙われているホストの話「ラブレス」。
「花咲か爺」と空き巣犯が飼い犬との思い出を語る「ロケットの思い出」。
「天女の羽衣」と叔父との愛について語る少女の話「ディスタンス」。
「浦島太郎」と地球の滅亡を前に平穏な暮らしを続ける男の日記「入り江は緑」。
「鉢かつぎ」とどうやらニューハーフらしいタクシードライバーが語る「たどりつくまで」。
「猿婿入り」とサル顔の男と地球を脱出するために結婚した女の話「花」。
「桃太郎」と地球脱出のロケットに乗り込んだ少年の話「懐かしき川べりの町の物語せよ」。

どの話も再読してかみしめたい感じだけど、特に好きだったのは「たどりつくまで」と「懐かしき川べりの町の物語せよ」かな。
「たどりつくまで」に書かれたドライバーの孤独。地球滅亡を前にして故郷に帰れるわけでもなく、いつもと変わらず植物に乗車中の出来事を語り聞かせる日々。鉢かぶり姫が異形だったために周囲から疎まれ蔑まれた気持ちに通じてるのかな。昔話は鉢の中から財宝は出るわ、姫は美人だわで良かった、良かっただけど、この異形の者であるタクシードライバーの結末は果たしてどうなのだろう。静かに死を迎えるだけなのだろうか。

「懐かしき川べりの町の物語せよ」は平凡だった高校生の彼が同じクラスにいた不良”モモちゃん”とその仲間と過ごした夏休みの思い出。塾へ行かずに友達の家でだらける。普段なら絶対できない悪さを平然としてしまう。不良の世界の入り口はなんであんなにも甘美なんでしょう。そんなノスタルジックな感傷に浸りつつ、最後はなんだか泣いてしまいそうでした。
憧れの”モモちゃん”を残してロケットに乗った彼が『人類の生活の記録』というディスクに吹き込む独白はとても切ない。

―いずれ死ぬからといって、生きるのをあっさりとやめることはできない

―二度と涙を流さず思考せず愛さない獣に僕はなりたかった



「3ヵ月後に地球が隕石とぶつかります」なんて発表されたら、私は何をするだろう。間違いなく、脱出ロケットには応募しない。やはりいつもと同じ日々を繰り返したいような気がする。くだらないことで笑って、おいしいものを食べて。強いて言えば風呂に入る時間を長くしたり、高めの食事をしちゃったり、いつもより寝坊したり、そんなところじゃないかな。
全編を通して、地球に残った人々の最期が幸せであることを願わずにはいられませんでした。

なんかね、すごいね、この作者。
この作者のやろうとしたことはすごいと思う。あとがきにも書かれているけど、要は”今「昔話」が語られたら”っていう話なの。物語の始まりを書くっていうのはありがちだけど、さらにそこに昔話が絡んでるから、いろんな伏線が出てきて、ちょっと頭が飽和するわ。
”物を語る”時というのは、なんらかの非日常的な出来事や体験があるわけで、この本では「地球がなくなる」ことをめぐって起きる人の感情を主に地球に残った者、違う惑星に逃げた者、それぞれの語る話がある。それだけじゃなく、何らかの感情なり状況なりが”語る”きっかけになっている話もあって、語られること、語っている人の心情、あれやこれやがあって、ものすごい密な本。
かなり読み応えあり。ちょっと自分の中でもまとまっていないんで、また読んでみます。

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