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土の中の子供
中村 文則〔著〕

昨年の芥川賞受賞作。自分と同年代が芥川賞かぁ。正確には年下だけど・・・私の主義というか、負け惜しみ的偏見により、年下の著者の作品は読まないことにしてる。なぜかと言えば、悔しいから(笑)。面白くて感銘を受けてしまっても自分を省みて悔しいし、つまらなかったらそれはそれで時間の無駄!と思って悔しいの。心が狭いのです。
それでもこの作品を手に取ったのは、単純に若者が書いた雰囲気がしなかったという理由と、同年代の男性の書く小説に興味を持ったから。

自ら暴力の中に身を置いてしまうような行動を取る主人公。自分の求めるモノが苦痛の先にあるのではないかと、暴力を受ける最中に期待をしたりする。適当に働き、好きでもない女と付き合い、物が落下するのを楽しむ彼。そんな彼には親に捨てられ、あずけられた家で虐待をうけ、ついには山中に埋められた過去があった。人と交わることが難しく、世界は自分を包むものではなく、相対するもの。上手く生きられない男と女の、愛というには欠けてることが多すぎる関係性。それでも前に進む予感を感じさせるラスト。

一人称で語られる彼の世界は、暗闇から小さな穴を通して外の世界を観ているような感じがする。雑踏の中にいると世界が迫ってくるような恐怖を覚えるという描写があったけど、これはすごく分かる。地下鉄から地上に出てきた時、光と音と車や人の動きに圧倒されてちょっと固まることがある。世界は自分なんかに目もくれず、その動きを止めようとはしない。当たり前のことだけど、その現実が怖くてしょうがない時がある。

主人公は虐待された心の傷を克服できずに孤立し閉じている。でも彼の感じる”生きにくさ”は共感できる。著者が書きたかったのは、虐待を受けた人の心の傷とかそういうのではないと思う。個人が社会の中で生きていくということの難しさ。こっちなんだろうなぁ。土の中で安息を覚えてしまう感覚、それでも息苦しさに地上を、光を、求めてもがく現実。なんだ、みんな土の中の子供なんじゃん。空気は地上にでないと吸えない。人が人として生きることができるのは空気のある地上でしかない。だから怖くても難しくても光ある地上にでなきゃいけないんだ。

面白いかと問われれば、うーん、となる。でもつまらない訳ではない。最初の印象どおり、若者が書いた作品とは思えない。若い著者にありがちな、勢いがあってコジャレた小説というのでは全然なく、中年に差し掛かる欧州の作家が書きそうな小説だ。彼が書いたのは社会の中での”生きにくさ”、社会と個人の関わり。中村文則が”文学的”と評される理由がわかる気がした。虐待経験者の悲惨な体験談でも泣かせる再生の物語でもない。文学だね、これは。27歳にして書いちゃいますか、こういうの。すごいねぇ。中学だか高校の時に読んだ、カフカだとかサリンジャーだとかを思い出しましたよ。あの頃、そういった文学が何を言わんとしてるのかさっぱりわからなかったけど。。
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reaさん、ようこそ~。
私ね、感想とか書くの下手なんですよ(笑)。読んだ直後に感じたことってすぐに忘れちゃうので、書くことを始めたんですけどね。
でも参考にしてもらえるなら嬉しいです。
また来てくださいな。
【2006/01/06 18:39】 URL | momo #79D/WHSg[ 編集]
はじめまして^^
ちょうどこの本を買おうかどうか
迷っていたので、とても参考になりました。
最近は若い人が書いた作品が、
賞をよく取るようになりましたね。
本屋で派手な帯を見て、
いつも買おうかどうか迷ってしまいます(笑)
これからも、ちょくちょく寄らせてもらいます。
【2006/01/06 14:29】 URL | rea #79D/WHSg[ 編集]














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