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夜のピクニック
恩田 陸著新潮社 (2004.7)通常2-3日以内に発送します。

 ?みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
  どうしてそれだけのことがこんなに特別なんだろうね。


中学とか高校生の頃って鬱陶しい行事が多かった。受験を前にしての合唱コンクールとかさ、放課後勉強する時間を削ってまでやること?みたいな空気に満ち溢れてたもんね。でもその時は気づかないだけで、その瞬間っていうのは、どんなに恋焦がれても二度と体験できない瞬間なんだよね。そういうまさに”青春時代”の1コマ1コマを思い出すような本。

『歩行祭』は80kmの道のりを全生徒が一昼夜歩き通すというイベント。朝から翌日の朝まで歩く。前半40kmはクラス歩行。クラス毎に列を作って歩く。仮眠をとったあと、残り20kmは自由歩行。好きな人と一緒に歩ける。でも時間制限があるから、大概の人は走る。時間がくると”護送バス”に拾われてしまう。バスには乗らない。みんなと一緒に完走したい。そういう思いで生徒たちはひたすら歩く。そんな行事の1日半を描いた作品。
最初はこんな行事あったら、絶対イヤだなと思った。遠足とかマラソン大会とかただ歩いたり走ったりすることがものすごく嫌いだったから。足だけを動かせばいい状態って、頭が結構クリアになるから、その頭と体のバランスの悪さが苦手だったんだと思う。マラソン大会の前に足を怪我した時にはラッキーと小躍りしたもん。でも当日はやっぱり寂しかった。みんなと一緒に走らなかった、このたった一日が自分と他の子との間に壁を作ったような感覚を味わった。ずっと忘れていたこの日のことを読みすすめるうちに思い出した。そして、いつしか自分も一緒に歩き出していた。なんつって。

ただ歩く1日半を描いたこの物語がどうしてこんなに面白いんだろう。大きな行事にまつわる個々の高揚感とか決心とか企みとか、高校生の中の微妙な人間関係、誰もが経験してきた感覚が懐かしさを伴ってよみがえる。体の痛み、ふと目の前に広がる景色、そういった細かい描写が一緒に歩いている気分にさせてくれる。きっと地方や学校が違っても、ここに描かれているような体験は誰もがしてきたはず。郷愁かな。二度と味わうことのない”青春時代”への郷愁。
それをくすぐるのが恩田陸さんのすごいところ。まず、歩行祭のルールが憎い。コースが3コースあって、3年間で全コース歩くことになるとか、1時間おきに休憩のホイッスルがなるとか、夜でも目立つように白のジャージが体操服だったりとか、学校において上手い具合に考えられた管理システムみたいところが懐かしい。あったよなこういうシステム。それらはその時鬱陶しくてもそれを守ることで得られる安心感があったりする。
そしてこの物語の一番の懐かしみどころはやっぱり恋愛事情。思い出すとウキャーと叫びたくなるような歯がゆい恋心とか噂話。誰それが何組の誰それを好きだとか、そういうの。ないよねー、社会人には。いいな、いいな。青春っていいなぁ。

この物語の軸は2人の男女の歩きながら変化していくお互いへの感情。学内で噂の2人が実は異母兄弟というメロドラマ的要素もあったりするんだけど、この2人の思いが一人称で代わる代わる描かれていて、そこの機微が上手い。そしてこの2人を見守り、時には仕掛ける友人たちの魅力的なこと。学生の時って、誰と一緒に過ごしたかが大切だよね。

読むのを温めていただけに満足。ちなみに恩田陸さんの短編集『図書室の海』にこの物語のエピローグ的短編があります。歩行祭の前夜、主人公2人とその2人を知る1人の準備中の思いが描かれている「ピクニックの準備」。こちらを読んでから読むのもまた良し。

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