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冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)
中野 恵津子
新潮社 2004-01-30
評価

by G-Tools , 2010/04/05





凍てつく大地。流した涙も汗もすぐ凍るような極寒の地で、寄り添って生きる人たち。
傍らにいるのは、妻であり、夫であり、犬であり・・・。
カナダのケープ・ブレトン島を舞台に綴られる物語の数々。
家族、親戚、隣人・・・島という閉ざされた土地ならではの密な関係と閉鎖的な社会。
それらの土地が目に見えるような圧倒的な筆致で、凍てつく寒さもカラダが解凍されるようなストーブの暖かさもリアルに感じられる。

そして、これらの物語の下地にあるもうひとつの共通点。
遠い遠いふるさと。忘れられそうなルーツ。ケルトだ。
自分たちのルーツが、美しい文化が、忘れられていく悲しさと、その一方でそれらを敢えて遠ざけてきた移民の性が物語に切なさを増す。

”なぜ、こんな厳しい大地に縛られて生きているのか?”
もともとの故郷を追われ、カナダのこの地に流れ着いたケルト民族の歴史。
流れ着いてきたときには、本土の人たちからは見放されていた厳しいこの地が、時代の流れによって”牧歌的”な観光地として注目を浴びると、国立公園や別荘という名の新参者の出現に土地を追われることになる。
新しい時代に生きるため、伝統を忘れ始める新たな世代。
忘れられゆく文化。自分たちのルーツ。

いつも、いつの時代も皆一生懸命に生きている。それなのに胸につかえる何かがある。
何でなんだろう?何がこんなに胸を打つのだろう?
しみじみと胸に響いてくる本。
特に、灯台守の一家の話が哀しくて…どこか他の土地で暮らすことを一瞬だけ夢見た彼女の生涯に胸が痛む。もちろん彼女には島を出るという選択肢もあったはず。でも、結局島で一生を暮らすことを選択してしまう、そういう人生に胸が痛む。
これはこの島に限らず、どの世の中に生きる人にも言えること。自分の前に現われた道を迷いながらも歩かなくてはいけない、そういうのが人生だと知らされる。
「こんなはずじゃなかった」と無関係の人を傷つけたり、フラフラと生きている人たちに読んでもらいたくなる。
選んだ人生も、選べなかった人生も、どちらも一生懸命生きなきゃいけないんだって、ぬくぬくとした部屋でこの本を読みながら、しんみりと思う。

ん?素晴らしい本でした。
もっとこの地の文化や歴史に詳しいとまた違った感慨があるんだろうな。


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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌



















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