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明日の記憶
明日の記憶
posted with 簡単リンクくん at 2006. 3.26
荻原 浩著光文社 (2004.10)通常24時間以内に発送します。

前評判から、また病気ものの泣かせ本か、と思って、なかなか読む気が起きなかった本。ブックオフの安売りをきっかけに読んでみました。

結果、いろんな意味で予想を裏切られた。
要は「可哀想!」と思って涙ダラダラって感じじゃないのね。
若年性アルツハイマーの話なんだけど、扇情的な文章は全然なくて、
病気を告知され、それを受け入れ、そして進行していく。
その様子が一人称で書かれていて、記憶を失うことの恐怖、自分が壊れていく恐怖がじわりじわりと伝わってくるの。
「他人事じゃない」
一番の感想はこれ。
哀しいとかよりも、怖い。自分がこうなったら、親がこうなったら・・・そういう怖さをリアルに感じてしまった。
この主人公と同じ世代の人にとっては、もっとリアルに堪える本だろうなぁ。渡辺謙が惚れ込んだのも頷ける。
広告会社という華のある職場でバリバリ働く50歳の営業部長。
今だに仲の良い妻がいて、一人娘はもうすぐ結婚。
その娘も既に孫を宿している。
まさに男働き盛り、花盛りだ。
そんな彼が体の不調を感じて、調べてみると診断はなんと若年性アルツハイマー。

近頃物忘れがひどいなぁ、なんて、仕事が忙しいとよくあること。
タレントの名前が出てこなかったり、他社の人の名前が出てこなかったり、彼に起きる前兆は私の日常茶飯事。
病気を告知されてからも、娘の結婚式までは肩書きを持っていたいと、こぼれ落ちていく記憶を必死で拾い集めて仕事を続ける。
メモで膨らんだ背広を着て、他人の顔色を伺いながら仕事をする彼の姿を想像すると哀しくてしょうがない。
一人称で書いているから、彼がどんな状態になっているかの客観的な描写はないけど、周囲の人間はきついだろうなぁ、こういう彼を見ているのは。

仕事を辞めた彼が拠り所としていた、陶芸教室の先生の仕打ちはひどい。
でも、これもやっぱりリアルなんだと思った。支払った料金を彼が覚えていないのをいいことに、何度も請求する先生。認知症の老人が騙されるなんて事件、ごろごろ転がってるもんね。そういうことなんだよね。

アルツハイマーと分かったときの周囲の態度が一番つらそうだ。
記憶を失い自分自身が揺らぐのと同じように、自分を忘れてしまう相手への感情というのも揺らいでしまうものなんだろうか。
病気だと分かっていても、自分を忘れられてしまうのはひどく哀しい。
忘れてしまった人は忘れていること自体もわからないだろうけど、忘れられた方はその前の記憶も忘れられてしまった時の記憶も持っているからね。
こういう本を読むといつも思うのは、周囲の人間がみな優しく接してくれますようにってこと。

とてもとても哀しい話だけど、この本で私は泣かなかった。小川洋子の『博士の愛した数式』では号泣。同じ記憶を失う話でも読後感が全然違う。『博士?』は忘れてしまう博士を客観的に描いていたからっていうのがあるのかな。この本はこうやって感想を書きながら、奥さんの気持ちとか娘の気持ちとかを想像するとグッとくる。
『明日の記憶』も映画化されたけど、映画だったら絶対泣くな。
会社を辞める場面とか、渋谷で迷った場面とか、風呂場でタオルかみしめて泣く場面とか、号泣ポイントいっぱいあるわー。
ラストシーンどうか美しく撮ってください。
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