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イッツ・オンリー・トーク
絲山 秋子著文芸春秋 (2004.2)通常24時間以内に発送します。

絲山さんの作品でこれが一番好き!
『袋小路の男』 『沖で待つ』 『逃亡くそたわけ』と読んだ中で、断然好き。
精神不安定な優子の過ぎ行く日と男たちを描いた 『イッツ・オンリー・トーク』 と、乗馬していた馬を死なせてから、色んなことから逃げている女性を描く 『第七障害』の2編。デビュー作とは思えないよくできた作品。
といっても、やっぱりこの人の小説は女性しか共感できないと思う。小説で描かれる女性像がストライクゾーンの女性にとって、”よくできている”と感じられるんじゃないかな。男だったら、この本読んでも感じるものは少ないんじゃないだろうか。

後書に上手い説明があって、絲山さんの作品は2つのタイプに分かれる。働く女性ものと壊れた女性ものの2つ。これはとても彼女の作品を理解するのに分かりやすい説明だと思う。
この本は確実に後者。 『逃亡くそたわけ』 に通じるものがある精神不安定を抱える女性の話。

心を病んで、エリートコースから脱落し、貯金を切り崩しながら絵を描いて過ごす優子。彼女は「お互いの距離を計りあって苦しいコミュニケーションをするより寝てしまった方が自然だし楽なのだ」とすぐ男と寝る。ダメ男を好きになる。
絲山さんの描く女性って、痛々しい。魚喃キリコの漫画を思い出しちゃうんだよね。ずばり『痛々しいラブ』って感じ。
でも、悲観してるわけではないんだよね。そういう風にしか、愛せない。けどしょうがないじゃんって思わせる所がある。私はこういう女性、嫌いじゃない。未熟だけど、どこか達観してて、でも世の中あきらめてるわけじゃなくて、彼女なりに一生懸命生きてるんだろうなって感じがする。

この本がいいなぁと思ったのは、優しい瞬間がいっぱいあるから。EDの本間くんでもいいと思う優子の気持ち。自殺未遂をした従弟との同居生活。”痴漢”だけが分かってくれる優子の気持ち。なんかね、ホッコリ描写が多かった。ひどく共感してしまった。

特に本間くんと過ごす夜の部分が一番好きだなぁ。優子の言葉の一つ一つがするりと私の中に入ってきた。こんなにも文章を引用したくなる本は珍しいほどに。

やがて私が終わると本間は気が遠くなるほど長い間私の髪を撫でていた。その手の厚みがわかるような重さを、目を閉じて味わった。短いまどろみの中で大型犬になった夢を見た。性的なものでなく、とろりとした幸福感があった。そういうことがどんなに女にとって大切なのか本間が知っているとは思えなかった。

庭付き一戸建ての本間が欲しいわけではなかった。眠れるスペースとしての男が欲しいだけだった。(中略)だからといって彼の歴史や世間体や精神を引き受けるつもりは毛頭なかった、そんなことを伝える言葉があっただろうか。世の中に愛のことばはいくらでも存在するのに、言いたいことがシンプルになるほど何も言えなくなってしまう。

心にしみ込んでくる言葉がいっぱい。優子ちゃん、幸せになって欲しいな。優子はなんだかんだ言って、本間くんが好きなんだよね。でも”好き”という感情を自覚することすら怖くて、遠まわしな言い方をいっぱいしてる。そんな優子がかわいい。

すでにこの本は、 『やわらかい生活』 として映画化され、ただいま公開中。映画はあの 『ヴァイブレータ』 の製作陣!これは間違いなく成功してるはず!キャストもいい!!寺島しのぶと大森南朋も健在。
すっかりこの手の働く女の哀愁漂う作品にはまるお年頃になってしまった。つらいよね、世の中って。生きていくって結構大変。
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イッツ・オンリー・トーク発売元 本を読む女。改訂版【2006/06/26 01:35】
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