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密やかな結晶
小川 洋子〔著〕

博士の愛した数式』を読んで以来、少しずつ小川洋子さんの本を読んでいる。今のところ一番読みやすかったのが『博士の愛した数式』で、他の作品は怖かったり、物足りなかったりするけど、全ての本に共通する空気感のようなもの、非現実的な世界観とでもいうのか、その雰囲気が嫌いじゃないのでいまだに読みすすめている。

この本は、”消滅”が起きる島の話。少しずつ島から色々なものが”消滅”していく。それは、香水であったり、写真であったり、鳥だったり。
それらのものは世界からなくなるわけではなく、この島だけである日突然消えるものが決まる。人々はそれらを川へ流したり焼却したりして、自ら存在を消す。そうして記憶は薄れ、その存在自体を忘れてしまうのだ。
中には”消滅”の影響を受けない人々がいて、彼らは秘密警察に”記憶狩り”という形で連れて行かれてしまう。
この島で小説を書いている女性を中心に”消滅”が進行していく話が書かれている。


小川洋子作品を読み始めて、最初に気づいたのは特殊な職業を扱うこと。
”標本製作者”、”チェンバロ製作者”、”速記者”・・・
でもそれ以上に共通しているのが、よく言われていることだけど、喪失を描いていること。
博士の愛した数式』は記憶力を失う博士の話。『薬指の標本』はタイトル通り薬指を欠損している女性の話。他にも声を失ったり、聴力を失ったり、愛を失ったり・・・

何かを失った人と異常ともとれる愛し方・愛され方をする人々。
失ったカラダの一部を埋めるかのように、彼女らに浸透していく愛。
この人の作品は何ていうんだろう。”密やか”という言葉がぴったりな作品が多いと思う。密やかで、隠微で、優しくて、少し怖い。
何かを失うことが知らず知らず、心身のバランスを崩していて、でも不完全だからこそ受け入れてしまうこともある。

『密やかな結晶』も”消滅”に抗うことなく、ただ淡々とその事態を受け入れ心の空洞を広げていく島の人々。彼ら自身は悲しいなんて感じていない。でも読んでいるほうはものすごく悲しくなる。ただただ受け身な人々が悲しい。大切なものを失っても何の感情ももてないことが悲しい。
いかに自分の心があらゆるものの存在で埋め尽くされているかを思い知らされる。本当にささやかなモノの記憶でさえも愛おしいものだと思える。
自分が失って悲しいものは何だろう?と考えてみる。
きっとカラダの一部や人よりも、もっと何気なく身近にあるモノの方が堪えるのかもしれない。”本”とか”音楽”とかは、やっぱりきついな。



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そうなんですよね、runaminさんのブログで初めてこの本の存在を知ったんですよ。
伊坂氏も書いてましたよね。
是非、入手したいと思います。
小川さんは金になりそうな職業はあまり書きませんね(笑)、そういえば。
【2005/12/01 19:52】 URL | momo #79D/WHSg[ 編集]
「秘密」読みました。私は図書館で借りましたよ♪いろんな作家が読めてお得です。
電話アーティストはなんというか・・金にならなそうな職業だ、、なんてつい現実的なことを考えてしまった私ですが(笑)、いや、でも独自の世界観が素敵だなぁと思いました。
【2005/12/01 15:30】 URL | runamin #79D/WHSg[ 編集]
ざれこさん、こんにちは。
「秘密」読みたいんですよー。でも書店で見つけられなくて。
電話アーティストですか。気になる職業ですね。今度読んでみます。
【2005/11/30 20:46】 URL | momo #79D/WHSg[ 編集]
こんにちは。TBありがとうございました。
私も少しずつ小川さんの本を読んでて(同じくきっかけは「博士・・」でした)
「密やかな結晶」も手元にあります。また読んだらおじゃましにきますね。
喪失、確かにそうですね。何かを失っていて、でも美しく生きている人々が多いような気がします。
あと、「秘密」というアンソロジーで「電話アーティスト」なる職業が登場します。興味深かったです。
【2005/11/30 13:18】 URL | ざれこ #79D/WHSg[ 編集]














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密やかな結晶発売元 本を読む女。改訂版【2006/03/04 20:41】
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